大阪万博開催の前年、昭和44年に開業した雁飯店。万博需要を見越した土地選びが当たり、開店資金をわずか1年で回収できたほど大繁盛した。万博閉幕後も大手家電メーカー数社の工場が進出するなど、街の発展は続き売上も右肩上がりがった。雁飯店が開店した当初は周辺にも中華料理店が多かったが、時代とともに数を減らしていった。そんな中でなぜ生き残り、人気を維持できているのか。「北部市場ができて以来、今でも毎朝仕入れに行っています。長年通っていると安くていいものが手に入るので、料理にも反映できますね。うちは原価率が4割ぐらいですが、それでも利益を確保しながら価値の高い料理を提供できています」。また中華料理の肝とも言える油にこだわり、オランダ産の高級ラード・エーワンスターを使用。味がよく、ボリュームもあるのに対し割安な価格、そして創業時からほとんど変えていないメニューでファミリー層のリピーターを獲得し、子どもからお年寄りまで多くの人に愛されている。
賢悟さんに代替わりするのは今年の予定だが、以前から将来を見据えた取り組みは続けてきた。「”大阪餃子”のブランディングと浸透をめざして餃子イベントに参加するなど活動を続けています。2025年の大阪万博出店を目指して大阪産(もん)名品の認証を得た当店の餃子は、ふるさと納税の返礼品にも登録していて、ふるさと納税サイトで月間人気ランキング2位になったこともあります」。コロナ禍で宴会部門の収益が見込めない今、ネット販売など非対面の販路拡大を強化しているようだ。「ネットを中心にお客様との接触頻度を増やし、知名度向上によるニーズ増を図り、十分に供給できる製造体制づくりまで、目標を持って今できる手を打っていくことで、新しい顧客を獲得していきたいと考えています」。
顧客が万博客から地元の人たちに変わってきたように、売る相手はこれからも変わっていきます。その変化に対応してきたのと同じく、これからはネットやイベントなど売る場所を変え、売る相手の変化に対応しないといけないと思っています。また自分の立ち位置を理解しながら高くアンテナを張り、自ら調べ探し、また組合のネットワークを活用するなどして情報を集め、今できることを創造することも大切だと思います。